3/1 市が市民を訴える裁判へ 歴史文化交流館事業

議案第54号「訴えの提起について」

市が歴史文化交流館の建設用地とするために各相手側から購入した土地で建設工事を開始したところ、購入した土地の地中から石綿含有スレート、アスファルトガラ、木くずが発見された。
歴史文化交流館整備事業を進めるためには、これらの地中障害物を処分しなければならず、各相手側から購入した土地には瑕疵があるといえるため、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求として、市は裁判で処理費用などを相手方に請求する。 

複数の土地所有者は2億8千万で市に土地を売却。
市が請求する処理費用等は約2億1千万円。

弁護士費用は88万円を想定している。

 
令和3年3月1日 
文化教育常任委員会

Q:今回、訴えの提起(裁判)として議案で上げた理由は?

A:本件は、民法に基づく瑕疵担保責任ということで、また地中障害物は市としては隠れた瑕疵であると考えている。隠れた瑕疵とは、当該地の地中障害物を処分しなければ交流館建設ができないことを瑕疵と捉えている。
また、隠れた瑕疵についての損害賠償請求をできる期間(除斥期間)が、事実を知った日から1年と定められている。地中障害物を発見したのは昨年の4月16日で、本年4月16日を超えると請求権の行使ができなくなる。
したがって市としては、確実な請求を図ることで行政としての不作為とならないよう権利の保全を図ることから訴えの提起を提案した。

隠れた瑕疵の請求は、売主の故意、過失、無過失とはかかわらず、瑕疵があったことで買主が請求できるものである。売主が知っていたかどうかは本件の請求には影響ない。

なぜ契約に「瑕疵担保責任」を入れていないのか?

A:訴えの提起の題名は、瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求であるが、2020年4月1日に民法が改正されているが、契約不適合責任ではないのか。
Q:本件の売買契約は2020年4月1日より前のため、改正前の民法の適用になる。

Q:民法にのっとり契約書を作成して「瑕疵担保責任は載せていない」ということだが、契約内容に含まれているかどうかが争点になる。今回は含まれていない。
廃棄物処理法でも、過去に埋設された廃棄物の土地所有者責任は明確な規定はない。予防措置として、土地の売買において、埋設廃棄物が見つかった場合に相互にどのような責任を担保するか契約書締結段階で協議し、契約書に明記しておくことが重要とある。
目的物に隠れた瑕疵があった場合、善意の買主には損害賠償請求ができるというのが旧民法で守られているが、瑕疵の内容を具体的に契約書の中で提起する条項を置くことで、瑕疵に当たるかどうかという紛争を防止するとある。
民法において訴えを起こすためには、民法に即して契約書を作成することが大前提であるが、なぜ瑕疵担保責任について契約書に含めなかったのか?

A:あくまでも民法上の規定に則した形で、民法上の規定と違った形の契約、特約は行えないことから、瑕疵担保責任は記載していない。


Q:そもそも契約書は、契約内容の確認と紛争予防、紛争化した場合の立証機能等を有するものであり、今回の瑕疵担保の記載もない契約書で、何を根拠に借主の瑕疵だと判断したのか。

A:事業地からの地中障害物は、市としては処分しなければ事業が進められない。このことは、交流館を建設する目的で買った土地が品質、性能を備えていなかったことに当たることで土地に瑕疵があると判断した。

アスベストは瑕疵に当たらないのでは?

Q:議案書では、「地中障害物があったので土地には瑕疵がある」との説明だが、地中障害物と埋設物は、地中に以前の解体工事で撤去されずに埋没している基礎や浄化槽のことを指すとある。
もともとここは畑、田で建物が建っていないが、アスベスト、アスファルトガラ、木くずが出てきたことは、地中障害物ではなく不法投棄と思われる。アスベストは土壌汚染物ではなく、有害物質は原則として瑕疵に当たらないため、今回出てきたものは瑕疵担保で追及することができない。
ただ、瑕疵と断言するためには、契約書に地中障害物としてアスベストやアスファルトガラ、木くずが指定されていた場合に、土地に瑕疵があるとの理由が成り立つと聞いている。契約書にこの指定はされていたのか?

A:本件で言う地中障害物は、民法の通説に従い、交流館建設に当たっての品質、性能を欠くことを瑕疵と捉えて判断している。


Q:隠れた瑕疵は、物件の引渡し後に発見されたものに限らず、引渡し前に発見されたものも含む。隠れた瑕疵とは、売買契約の締結時に隠れている瑕疵を示す。売主の責任として、売主が費用負担して解決した上で買主に契約の目的どおりの物件を引き渡さなければならない原則である。
土地売買の契約締結日は、地権者によって異なるが、最後の日にちが平成31年2月21日とある。建築工事契約が令和2年3月、最初に障害物が出てきたのが令和2年4月とある。契約時には発見できなかったとしても、土地を購入して市の土地になれば調査ができたが、この1年ほどの期間、調査がされなかったのはどうしてか。

A:市としては地中障害物の存在を認識していなかったため、事前の調査は考えていなかった。


Q:地中障害物の処分について、1立方メートル当たりの単価が記載されているが、石綿含有スレート、アスファルトガラ、木くずの算定基準はどのように算出したのか?

A:請求に係る積算根拠は、地中埋設物の搬出、仕分け、梱包、積め込み、運搬、処分などの工程が必要となる。本市における通常の新規工事発注と同様に、公共建築の積算手法に基づいて積算を行い、処分に係る費用を算出している。

相手方(市民側)との対応について

Q:最初に産業廃棄物が発見されたのは4月、5月で、6月に大量の木くず、7月にアスファルトガラの埋設が明らかになった。埋設物が発見された状況を売主に伝える交渉はあったのか。

A:地中障害物について市として売主に状況を確認したのは9月になってからである。
前土地所有者と会ったのは2回。1回目は9月、次は1月。9月時点では、地中障害物の状況をこちらから説明し、経緯等の確認をした。1月は地中障害物等の状況等を説明、また写真も示し、対応については市としては支払いを願いたい、訴訟の形で考えていることを伝えた。


Q:相手が市民ということもあり、いきなり裁判ではなく、裁判以外の方法での検討はないのか?

A:市教委としては請求権を失うことをリスクと考えていて、それを保全するためには確実な請求で訴訟と判断した。また、先方から幾らなら払えるとの申し出があったとしても、示している請求額を支払ってもらいたい中で、幾らならばよいとの判断は市としてもできない、それらの客観的な判断も含めて司法に委ねる。

Q:もう少し誠意のある丁寧な説明を売主にできないのか。
A;売主への対応について様々意見があることは承知しているが、確実な請求には訴訟の形が確実である考えに変わりはない。

Q:議案書207Pの5、訴訟遂行の方針で「訴訟遂行上必要がある場合は、訴えの追加その他の変更をすることができる。」とある。これについての具体的な説明を伺う。
A:控訴するか否か、あるいは請求額の変更が生じた場合、議決を経ることなく対応させていただく趣旨の項目である。


令和 3年 3月 文化教育常任委員会−03月01日-01号

議会の採決

「訴えの提起について」 

☆反対した議員  
杉本、藤本、豊嶋、小磯議員(市民自治の会)
⇒ 市は真摯な交渉を重ね、円満な解決を目指すべき 

中野・金田議員(共産党市議団)
⇒ 市が十分な誠意を持って交渉手段を尽くしていると認めがたい。裁判以外の方法で交渉を継続すべき  

藤村議員(会派に属さない議員)
⇒ ① 市は民法上の規定と違った契約・特約は行えないという法解釈の下、契約書に瑕疵担保責任が明記されていない。それならば、不動産取得時に瑕疵担保責任を明記している契約は茅ヶ崎市の民法解釈の視点からは、民法上の規定と違うことになる。
② アスベストは土壌汚染対策法に基づく土壌汚染物ではなく、有害物質は原則として瑕疵に当たらない。(東京地判平成24年9月27日判時2170号50P、アスベストを含有する土壌、建設発生土の存在を瑕疵に当たらないという判例が出ている。)
売主と話し合い、解決に至ってほしい。


賛成の議員
早川、新倉、岸議員(新政ちがさき)
⇒ 処分費用が不当な支出とみなされることも考えられる。隠れた瑕疵として訴えを起こし、判断を司法に委ねるのが妥当 

青木、山田、長谷川、加藤、木山議員(絆ちがさき)
⇒ 市には地中障害物を撤去する税金を市民に説明する責任がある。第三者である司法に委ねることは適当  

阿部、菊池、滝口、山崎議員(公明ちがさき)
⇒ 今後も双方による話合いのみでは決着がつかない状況で、第三者の判断を仰ぐことは致し方ない

水本、岡崎、小島、水島、小川議員(ちがさき自民クラブ)
⇒ 除斥期間を過ぎると請求自体ができなくなり、司法で明らかにするため、訴えの提起につながった

広瀬、岩田、柾木議員(湘風会)
⇒ 市側の責任も全くないとは言い切れない点もあるが、客観的な立場で司法の判断に委ねるのが一番妥当 

伊藤議員(会派に属さない議員)
⇒ 市税の公正さの観点から損害賠償の手続はやむを得ず、司法の場に判断を委ねるべき 


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