特集「どうなる?茅ヶ崎ゴルフ場の利活用事業」
令和元年 7/29 〜 8/3 に県と茅ヶ崎協同(株)は「茅ヶ崎ゴルフ場の利活用事業」の提案を募集し、9月には事業者が決まり発表される予定です。
今回の募集要綱や計画条件、要求水準書などを見ると、
★広域避難場所として確保する最低面積が半分になっている
このことに危機感を持っています。
また、前回の事業者募集で住民から示された問題点が、解決されないまま繰り返されている。
こういったことから、私にとって初議会となった6月議会で、問題点をピックアップして一般質問いたしました。
質問と市長の回答は、こちらの議事録で。
危機感を感じる募集条件
「広域避難場所として確保する面積」について
茅ヶ崎ゴルフ場は浜須賀小と合わせた敷地全体が、大規模な延焼火災に対する貴重なオープンスペースとして広域避難場所に指定されています。
今回の事業者募集で、広域避難場所として確保する面積について、県は「少なくとも6万㎡以上の使用可能面積」としています。
県の財産経営課に「6万㎡以上」とした根拠を聞いたたところ、
茅ヶ崎市が広域避難場所の見直しを行い、見直し前に約6万人だった茅ヶ崎ゴルフ場の要避難人口が、見直し後に約3万人となった。1人2㎡×3万人で6万㎡とした、ということです。
☆広域避難場として確保する面積が12万㎡ ⇒ 6万㎡ と、前回の半分になっている!
市は半分の面積を認めている?
茅ヶ崎市は「3万人は避難地区分けの結果としての人口。茅ヶ崎ゴルフ場に避難する人口を示すものではない」と県に主張。
一方の県は、「市が3万人という数字を出しているではないか、ゴルフ場への避難者が大幅に減少した」という認識で事業者を募集しています。
市と県の主張には大きな違いがあり、この点について市の見解を問いました。
市長:事業者募集では一定の基準が必要となることから、市が発表した要避難人口3万人に1人2㎡を乗じた6万㎡を目安として設定している。広域避難場所として6万㎡以上の面積を確保するよう求めている。
「募集の目安として6万㎡を設定した」という消極的な市長回答です。
茅ヶ崎市が広域避難場所の見直しをかけた結果、茅ヶ崎ゴルフ場(浜須賀小学校を含む)の使用可能面積は、約5万6000㎡も減少しています。
見直し前と較べて大規模な延焼火災から安全に避難できる有効面積が、以前の68%にまで減少したことを示しています。
県はこういったデータは無視して、3万人という都合の良い数字をピックアップしています。
また、気になるのは、前回の事業者募集で「広域避難場所や緑地の確保の数字をゆるめてもらえれば、利益を出せるので開発ができる」という事業者の声があったと、再三にわたって財産経営課から県議会に報告されています。
今回まさに12万㎡から6万㎡にゆるめた訳で、事業者の思惑と一致することが懸念されます。
土地の転売などによる乱開発について
杉本:いったん県有地が売却されたら、土地の転売をしばれるのは、せいぜい契約期間の10年間と県も認めています。「市は土地の転売などによる乱開発にどう歯止めをかけていくのか?」
市長:都市計画制度などを活用することで、当該地のまちづくりの目的に応じた土地利用を適切に誘導し、乱開発が起きないまちづくりを実現していく。
用途地域の変更について
杉本:事業者が用途地域の変更を必要とする案を出してきた場合、早い段階から用途地域を変更するプロセスなどに住民が参加できることが絶対条件と考えます。どのように住民の意見を反映するのか?
市長:用途地域の変更は、まちづくりにとって有益であり、変更内容が妥当であることが求められる。こうした内容を確認し、市民の方も含めた共通の認識とするために、土地所有者、優先交渉権者(事業者)と市で「まちづくり計画」を策定する。
用途地域の変更においては、この計画をもとに都市計画法に基づく手続きを進めていくと考えている。
みどりの保全、周辺環境の保全について
杉本:周辺住民へのアンケート調査では、「緑・環境の維持」「広域避難場所の機能の維持」「ゴルフ場としての維持」の声が圧倒的で、「このまちで暮らす魅力」は、静かな住宅街に住めること、緑が多いこと。
また、住民が圧倒的に望まないものは「大型商業施設」「宅地開発の促進」です。住民の要望と県の事業姿勢のかけ離れ方について、市の考え方を問います。
市長:市としては、広域避難場所の機能やみどりの保全を踏まえると、当該地がゴルフ場として存在することが理想であるとの考えを県に伝えているところ。
県等との協議では、パブリックコメントや、意見交換会などの意見について、県などに伝えているところ。今後も、市のまちづくりにおいて有益な土地利用となるよう、引き続き神奈川県と協議していく。
ラチエン通りの安全責任について
杉本:開発ではラチエン通りがメインの出入り口とされているため、通行の危険性の増大、さらに鉄砲道の交通渋滞、周辺住宅への騒音や排気ガスなど懸念されます。環境の悪化の影響を受け、我慢して生活するのは周辺住民です。責任の所在と対応策について問います。。
市長:茅ヶ崎ゴルフ場の周辺は、第一種低層専用住宅地域に指定されており、過度な交通の流入や騒音は抑制すべきと認識している。事業者提案にあたっては、近隣の交通状況に配慮した交通計画を検討し、周辺の住環境にたいして交通の流入の抑制策を講じ、市民生活に配慮するよう募集要綱に記載して頂いている。
ゴルフ場の土地がすべて民有地になる可能性も
茅ヶ崎ゴルフ場利活用事業の募集条件から見て、広域避難場所の確保が長期的にむずかしいのが心配です。
その理由は、ゴルフ場の土地がすべて民有地になる可能性もあることです。
事業者が県有地すべてを買い取りやすい条件 になっていて、逆に、ゴルフ場事業は土地の貸し付け価格を高くして採算が取れにくい条件 にしているためです。
県有地をすべて買い取った事業者がこれを宅地として販売すれば大きな利益が出ます。
逆に、9ホールのゴルフ場の場合の貸し付け参考価格は 1030円/㎡ なので、地代は年2億円。観光日本が採算が取れないとゴルフ場事業から撤退した時点での地代が1億7千万円。2億円では経営はいっそう苦しくなります。
いったん民有地となれば、契約期間後の転売を防ぐ有効な手段はなく、これは県・市の担当課は認めています。
民間企業は企業の存続と利益追求が最優先。経営危機に陥れば、広域避難場所の確保より売却して破産を免れる道を選択せざるを得ません。そうでなくとも、土地の転売で大きな利益が出るならば、売却はたいへんに魅力的なはず。広域避難場所の確保はむずかしくなります。
こんな売却のシナリオも・・・?
市民との協議に時間がかかり、令和2年3月までに都市計画変更が間に合わないことを見越して、事業者がゴルフ場経営をしたいと手をあげ(見せかけで)、ゴルフ場事業の提案をして採用される。県有地は事業者が買い取る。
⇒ 都市計画が変更された時点で、採算が取れないなどを理由に事業の中止を申し出る。
⇒ 県は売却した土地の買い戻しを可能としているが、買い戻ししない。
⇒ 事業者は自由に土地を転売する
⇒ 転売先は住宅販売などで利益を出す。
誰でも考えつきそうなシナリオですが・・・
住民との協議のあいだはゴルフ場経営、その後、安価で買い取った県有地を相場で売って大きな利益を出す。事業者が不動産部門を持っているなら、あり得る話・・?
広域避難場所を守るためには
県の売却価格では、約44億円で県有地すべてを買い取れます。
県との交渉次第でさらに下がると考えれば、将来に向けて広域避難場所の確保のために、市が購入しないのがむしろ不思議な金額。
茅ヶ崎ゴルフ場周辺は、閑静なみどりの住宅地として、その魅力にひかれ移住した住民も多く、今になっての大規模開発では手の平を返されるようです。
たった10年でなく、100年の将来にわたり広域避難場所を守り、みどりの環境を守るためにも、県有地12万㎡の買い取りが望ましいと考えます。
署名などで市長に買い取りを要望していくのも一案と思います。
杉本けいこ 市議会レポート Vol.1 令和元年8月発行
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