震災時、茅ヶ崎市では延焼火災のリスク

2022年9月11日(日) 
松下政経塾 茅ヶ崎市 共催 防災講座
〜震災時に最大リスクになる大規模延焼火災への備えを学ぶ〜

「大火を経験し伝えたいこと」
糸魚川市消防本部局長 竹田健一氏

2016年12月22日昼前に、新潟県糸魚川市で発生した火災は、強い南風(フェーン現象)で見るまに広がり、翌日の夕方の鎮火まで約30時間火災が続き、147棟、3万平方メートルに延焼が及びました。
まさにクラスターの茅ヶ崎市で危惧されている、地震時の延焼火災を見る思いでした。 

糸魚川市消防本部局長 竹田健一氏の講演で、

①強風による飛び火
②公園や空き地のような延焼を防ぐオープンスペースがなかったこと
(茅ヶ崎市は市民一人当たりの公園面積が県で最下位)

この2つが印象に残りました。


想定外への対応

火災発生時、消防も住民もすぐに火災は終わると思っていたといいます。
しかし、台風並みの強風で、想定外の場所に飛ぶ「飛び火」を鎮火できず、消防は火を追いかけるのに精一杯でした。
木造密集地帯で、複数箇所(10ヶ所)での火災対応には限界があります。
延焼火災は日中でしたが、これが夜間だったら、さらに困難だったでしょう。


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茅ヶ崎市の現状について

そこで、茅ヶ崎市の現状について、防災対策課などに質問を送り、回答を求めてみました。 

茅ヶ崎市のクラスターについて

茅ヶ崎市は、県で最大のクラスター地域(延焼運命共同体)であり、特に海岸側は10671棟、9241棟の延焼規模という県の数字が出ていましたが、現在はどのような数字になっていますか?

平成20年度に調査して以降、平成25年度に状況に変化がないか検証を行いましたが、大きな変化は見られませんでした。その後においても、まちの状況が大きく変わっておりませんので、再調査等は行っておりません。
したがって、クラスターを構成する建物数としては、平成20年度に調査したものから、変わっておりません。(都市政策課)



クラスターとは?

クラスターは、本来ぶどうの房、群れ、集団の意味。木造住宅が密集して連続している状態です。
火災を消火できなかった場合、隣から隣の家屋へと延焼は拡大します。このように、延焼拡大し、運命を共にする建築群のことを「クラスター」といいます。
クラスター内の建物から1件でも出火し、そのまま放置した場合(消火できない場合)にクラスター内の建物全てが焼失する単位になります。

茅ヶ崎では、JR東海道線の南側(海岸側)に、10671棟と 9241棟の二つの巨大クラスターがあり、県内最大規模となっています。

 

南西の強風について

糸魚川市のケースでは、午前10時過ぎに14.2mの最大風速を記録し、最大瞬間風速は正午すぎに24.2mに達したほどの強風でした。茅ヶ崎市では強風のデータはどのようになっていますか?(広域避難場所の見直しの際には、データが出ていたと記憶しています。)

広域避難場所の見直しにおいて、神奈川県大震火災避難対策計画では、「火災の延焼速度及び延焼範囲に最も影響を与えるものが、風速であり、地域的には風向きも問題になる」とされていることから、風速・風向については以下のように考えられました。
茅ヶ崎市と隣接する気象庁の観測所である辻堂観測所の過去5年間の日最大風速の風向を調べた結果、一年を通じて、風向は北風と南風に限られた地域特性を持っています。
また、輻射熱シミュレーションに用いる風速では、辻堂観測所における過去5年間の平均、標準偏差、超過確率のデータを統計処理し、12m/sとしています。なお、相模湾に面した広域避難場所は南側に市街地がないため、南風による輻射熱影響を受けないことから、12m/sと南風を除いた8m/sの2種類が用いられています。(防災対策課)
 

強風による飛び火について

糸井川市のケースでは、「風が強く、どんどん飛び火して、消火作業が追いつかなかった」「強い風にあおられた火が、約100メートル離れた建物に飛び、火の手が急速に広がった」と消防が話していました。このような飛び火は、茅ヶ崎市でも想定していますか?

広域避難場所の設定は、周囲の住宅において延焼火災が生じた場合に火災の輻射熱から命を守ることを目的として作成されたシミュレーションに基づき設定されたものであり、強風に伴う飛び火による火災を想定したものではないことから、飛び火の想定はありません。(防災対策課)
 

茅ヶ崎市の配水池について

阪神・淡路大震災のときは、ほぼ無風でしたが、水道管が大地震で破損して、消火したくとも水が出ませんでした。(神戸市における住宅全焼7121棟は,関東大震災に次ぐ規模で、強風ならさらに拡大した。)

茅ヶ崎市にある配水池(赤羽根)は、250ガル(震度6は250~400ガル)の地震を観測すると、30分後に自動的に緊急遮断弁が閉じる仕様になっている。また、30分を経過しなくても、配水池の容量が確保水量を下回ると、飲料水の確保のために自動的に配水が遮断される。(神奈川県企業庁茅ヶ崎水道営業所) とされていましたが、これは現在でも同じでしょうか?

8月29日に茅ヶ崎水道営業所に確認したところ、特に仕様が変わっていないため、現在も同じとのことです。(防災対策課)

茅ヶ崎市の消防車の台数・配置

糸魚川の大火は「平常時」の延焼火災でしたが、「大地震時」という条件下で、糸魚川市(4万人)の6倍の人口の茅ヶ崎市の場合、消防車はどうのような台数配置になっているのでしょうか?
また、出火は1カ所ではなく、市内数カ所で同時に出火する「同時多発火災」も想定されています。 
茅ヶ崎の街は、JRの線路で分断されているので、北の消防車が南へ行くのは困難です。特に南側の火災には何台の対応になっていますか?


茅ヶ崎市消防本部が保有する消防車は14台あります。
内訳は線路北側(本署、松林出張所、鶴嶺出張所、小出出張所)に8台、線路南側(小和田分署、海岸出張所)に3台、寒川分署に3台です。
通常の火災であれば、消防車両9台(指揮車1台、消防車6台、救助工作車1台、救急車1台)が出動します。
一方、糸魚川のような火災の場合には、大地震時と同様の対応となります。

〈線路南側の災害対応〉

大地震時の災害対応については、市内の状況について情報収集を行い、優先すべき事案を決定し、対応します。大地震時は非常時の体制となり、参集により人員も増えることから、同時多発火災が発生した場合は、出動可能な人員及び車両を最大限活用し、初期消火及び延焼拡大防止にあたります。
さらに、管轄区域内の消防団に加え、県下消防相互応援協定に基づく応援、県内消防広域応援、緊急消防援助隊の要請を行い、部隊増強を図ります。
線路北側の部隊は、状況によりますが中島地下道や本村地下道等を利用することで線路南側へ出動することが可能であると考えます。
〈補足〉
平常時に大規模火災が発生した場合は、全消防力をもって消火に当たることが出来ますが、大地震時+同時多発火災の場合は、火災の発生地域、規模、件数等を考慮し対応することとなります。常備消防、非常備消防、応援部隊等を随時投入し消火にあたるため、1箇所の火災に何台の消防車で対応するかは、その状況によって異なります。(警防救命課)

水の確保について

大地震の直後、消火のために大量の水が必要になります。しかし、阪神淡路大震災では、以下のようなことから水が出なくなり、消火活動に支障が出ました。茅ヶ崎市はどのような想定になっているのでしょうか?

• 配水管・給水管の破損
地震により配水管や給水管の破損が発生。あちこちで、大量に水がもれ、神戸市では、地震後1~2時間で「水位ゼロ」となった配水池が19箇所。

• 消火栓が使えない
停電により送水ポンプが働かない、断水や水圧低下により十分に活用できない消火栓が多数発生。 

• 防火水槽は空に
防火水槽自体もは家屋の倒壊などによって水がもれる。また水槽の水も、放水ですぐ空になった。(茅ヶ崎市でも、防火水槽の水は40分で底をつくとしている。)

• 飲料水の確保
配水池の送水で、神戸市では飲料水の確保と消防用水の供給とのはざまに揺れた。

上記4点について、茅ヶ崎市はどのような想定になっているのでしょうか?
 
防火水槽については、消火栓が使用できない場合の水利として重要であると認識しています。40tの水があれば消火活動は可能ですが、複数の火災や大規模火災で40tでは不足する場合は、公共施設等に整備している、100t防火水槽を基幹水槽として遠距離送水にて火災防御を行うこととしています。漁港や河川等の自然水利を利用し、基幹防火水槽や簡易防火水槽に遠距離送水し、消火用水を確保いたします。
遠距離送水の方法として、災害時協力事業者にコンクリートミキサー車の要請も可能です。
また、広域応援として県下消防相互応援協定、県内消防広域応援実施計画に基づく応援要請、緊急消防援助隊の要請を行います。広域応援で、遠距離大量送水装備を有する車両や消防ヘリを依頼することで、長距離かつ大量送水や空からの放水が可能となります。(警防救命課)

移動式ホースについて

断水すれば移動式ホースは使えません。初期消火活動では、10分で炎は屋根まで、20分あれば隣に燃え移るとしています。
移動式ホース1本の放水では、炎上している建物の消火は困難で、その目的は延焼の阻止だとしても、水道管が破損して断水すれば使用できません。(消防車のようにポンプ式でないので、防火水槽の水は放水できない。)
移動式ホースについては、上記のような理解でよろしいでしょうか。

移動式ホース格納箱は、消火栓の水圧を用いて放水を行う資機材となるため、防火水槽に用いることはできません。
市民による初期消火用具として、移動式ホース格納箱は非常に有用なものではありますが、より身近な消火用具として消火器がございます。火災に気づいた際には、まずは、街頭消火器や家庭に備えてある消火器などを活用していただくほか、水バケツなど身近な物を用いて、素早い初期消火に努めていただくことが重要だと考えています。(防災対策課)

市が以前にくらべて周知啓発していないのでは?

茅ヶ崎特有の災害リスク、特にJR より南側の巨大なクラスターの存在、大地震時の大規模な延焼火災のリスクについて、新しく市外から転入してきた若い子育て世代は知らない方が多いのでは? と思います。



糸魚川市の火災でも、3階建てビルより遥かに高い火柱があがっています。

クラスターでは、さらに巨大な災が迫り、小中学校のグラウンドの広さでは、火災の熱風で命が危険にさらされる場合があります。
「小中学校に逃げればでいいと思っていたら、違った。」という方もいるように、避難所(小中学校)と広域避難場所(例えば、茅ヶ崎ゴルフなど)の違い が分からない方も多くなっているでしょう。

また、糸魚川市の火災で指摘されていた、「公園や空き地のような延焼を防ぐオープンスペースがなかったこと」
これは、そのままそっくり茅ヶ崎市に当てはまり、さらに市が公園などを増やす対策を考えていません。



①火事を出さない
②早期発見
③初期消火  

が普段から大切になりますが、震災時には手のつけられない延焼火災が発生するリスクがあり、災害が大きくなると、公助はあてにならなくなります。

一人一人が、自分にあった避難を考えて、備えることが必要になります。
 
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