今回のポイントは、
市の南側で最大の保存樹林だった中海岸の邸宅が、更地になり開発された。
茅ヶ崎市は、またしても貴重なみどりを失うことになった。
①保存樹林を残せる可能性がある前の段階で、市は交渉していない
②自然環境庁内会議にもかけていない
③みどり審議会の議題にもかけていない
もう、新たな保存樹林にできる場所は市内に残っていない。
南側の壊滅的なみどりの状況について、
「市はどうにかするのか、それとも諦めるのか、どちらなのか?」
消えた中海岸の保存樹林
(1)市街地のみどりの保全について
環境基本計画には、「茅ヶ崎市みどりの保全等に関する条例」に基づいて、市内の樹林や樹木の保全を図るほか、民有地の緑化を促進し、市内のみどりの保全・創出を図ります、と記載されている。
2番 杉本啓子議員
今回は具体的な問題でお聞きしていく。まず、保存樹林について。
今現在、中海岸の邸宅は、地権者から開発業者に売買され、クロマツを主とするほとんどの樹木が伐採され、マンションが建設されることになっている。
緑地や公園の少ない南側では、ここは鳥や小さな生き物の貴重な生息地でもあり、約4900平方メートルの市の南側で最も大きかった保存樹林だったが、この保存樹林の解除のときに、市はどう動いたのか、それをまず詳しくお聞きする。
次に、市の南側の壊滅的なみどりの状況 について。
ここ数年にわたって、広大な保存樹林の邸宅などが次々と開発されてマンションや宅地となり、市の南側の緑は壊滅的になっている。今現在、中海岸、東海岸南などでも莫大な緑が失われている。
南側は、震災災害時に大規模な延焼火災が想定されるクラスターであること、道幅が狭く街路樹がないこと、県で一番緑地、公園が少ないことを市が認識しているならば、対策を取らなければならない、そのためにみどりの基本計画、生物多様性ちがさき戦略が2019年に作成され、環境基本計画が2021年に作成されたのではないか。
その中にある基本理念などは言葉だけなのか。市はどうするつもりなのか、緑のあるまちづくりに対する考え方をお聞きする。
○後藤裕史都市部長
保存樹林の解除の相談が所有者からあった場合には、まずは所有者の方に継続のお願いをしている。しかしながら、私有財産であるため、所有者の意向を尊重せざるを得ず、解除に至ってしまう場合もある。
所有者は、市街化区域内において5000平方メートル以上の土地の取引をするときに、「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づき、契約予定日の3週間前までに有償で譲渡する旨の届出を行う必要がある。
中海岸の樹林地については、従前より保存樹林の継続をお願いしてきたが、この届出が提出されたことを受け、所有者に再度継続の要請をしたものの、了解が得られず、土地の譲渡の意向を示された。
このことを受け、庁内関係部局に照会した結果、当該樹林地を公共用地として活用する見込みがなかったため、市として土地の買取りをしない旨の通知をし、現在に至った。
緑のあるまちづくりに対する考え方については、
「茅ヶ崎市みどりの保全等に関する条例」に基づく保存樹林、市民緑地、みどりの保全地区等の制度を推進するとともに、開発行為にあっては、「茅ヶ崎市のまちづくりにおける手続及び基準等に関する条例」の第36条により、予定建築物の敷地内に原則として15%以上の緑地を設けるよう指導をしている。今後についても、各制度の推進及び開発事業者に対して緑化の協議を行っていく。
○2番 杉本啓子議員
そういった解除の申請が出てからではなく、保存樹林を残せる可能性がある前の段階、ここは時間がまだたっぷりあったはずだが、市はどう交渉したのか?
○後藤裕史都市部長
市としては、従前より所有者に対して、保存樹林の継続、または民間の所有のまま緑地を市民に公開する「市民緑地制度」の指定に切り替えるようお願いをしてきた。その後、所有者から唐突に「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づく届出が出された。
これは地方公共団体が土地を取得しやすいように、土地の先買い制度を盛り込んだ法律による手続で、一定規模の広さの土地の取引に関しては、所有者は契約予定日の3週間前までに有償で譲渡する旨の届出を行う制度である。この届出が出された関係で、これを受けて担当課が所有者へ連絡し、再度保存樹林の継続を再三においてお願いしたが、聞き入れていただけなかった。このような交渉経過を経て、市として土地の買取りをしない旨の通知をし、現在に至った。
○2番 杉本啓子議員
⭐️「自然環境庁内会議」に、この件はかけたのか?
自然環境の保全と緑化の推進について、早い段階から庁内で情報と課題を共有し、市として組織的に効果的な保全策を検討し、対応していくために設置された会議 だが、市の南側で最大の保存樹林の解除の相談があったとき、自然環境庁内会議にかけたのか?
○後藤裕史都市部長
自然環境庁内会議の目的に関しては、議員の説明されたとおりの目的である。
この保存樹林の解除の件については、「公有地の拡大の推進に関する法律」に基づく届出に対して、市が当該保存樹林を含む土地を買い取らない旨の通知を所有者に送付した後の、令和2年3月に、書面により会議の構成員に対して情報提供をした。
情報提供する目的としては、所有権移転後の法令等に基づく手続を確認するためで、保存樹林の解除に際しては、その土地所有者の方の意向を尊重せざるを得ないことから、自然環境調整会議で解除への対策を検討すべきものではないと認識している。
⇒部長の回答から、市は早い段階で庁内で検討していないことが分かる
○2番 杉本啓子議員
多くの周辺住民の方から、莫大な緑が失われ、生活環境が激変する不安など、さまざまな声が市に届いているはずだが、それでもなぜ庁内会議にかけないのかをお聞きする。
○後藤裕史都市部長
自然環境庁内会議の会議要綱の中に、保全策の検討等を行うことを目的という文言があるが、この中海岸の案件については、もう既に保全策を講ずる段階ではなかったと、いきなり届出が出てきて、もう既に所有者の意向としては、継続する意向がないということをはっきり申されたということで、この保全策に関しては、もう講ずる段階ではないという判断をした。
保全策に代わる土地利用転換後の指導方針における庁内情報共有ということで、自然環境庁内会議に報告という形で上げた。
○2番 杉本啓子議員
全てが手後れであったようにも聞こえるが、もう1点、なぜ保存樹林の解除について「みどり審議会」にかけないのか、お聞きする。
保存樹林の解除については、以前から重大なものであると認識されて、庁内で検討していくシステムとして「自然環境庁内会議」を設置し、第三者の意見として「みどり審議会」「環境審議会」に必ず議題として上げ、検討してもらうとしていたはずだが、どうしてこれが実施されないのか?
○後藤裕史都市部長
茅ヶ崎市みどり審議会は、都市緑地法に基づく緑地の保全、緑化の推進に関する基本計画、生物多様性基本法に基づく生物の多様性の保全などに関する基本的な計画の策定、及び施策の推進などに関する事項について、市長の諮問に応じて調査審議し、その結果を答申し、または意見を建議するという市の附属機関になっている。
保存樹林の解除については、その土地所有者の方の意向を尊重せざるを得ないため、個別の案件について審議会の場で解除への対策について審議すべきものではないと認識している。
○2番 杉本啓子議員
庁内会議を設置して、みどりの審議会に議題として上げることは市民に約束していたはずだ。
今後については、みどり審議会に保存樹林の解除については必ず議題として上げて検討すると約束していただけるのか、確認する。
○後藤裕史都市部長
保存樹林制度については、みどりの保全に関する施策の一つとして、その指定状況を年度の区切りなどで機会を捉えて茅ヶ崎市みどり審議会に報告し、必要に応じて御意見をいただいてきた。今後についても、前問でもお答えしたとおり、個別の案件については審議すべきではなく、報告するべき案件ということで今後も対処していきたいと考えている。
中海岸の南側で最大だった保存樹林
すべて伐採
新たな保存樹林は市内に残っていない
○2番 杉本啓子議員
保存樹林について、茅ヶ崎市に新たな保存樹林に該当する樹林はあるのか?
令和3年1月から保存樹林の新規の指定を一時中止しているが、市街化区域内で美観上特に優れている樹林で、樹林面積が300平方メートル以上という条件を満たす新たな樹林はあるのか?
○後藤裕史都市部長
市街化区域の樹林の全てを調査したわけではないので、一概には申し上げられないが、樹林面積が300平方メートル以上の規模の新たな樹林はほとんどない状況 である。
○2番 杉本啓子議員
美観上特に優れている樹林、そういった美しいものを税金で助成して長年にわたって保存したのに、なぜ残さないのか。
残す場合には、地権者の方が保存樹林を解除するときに、市が交渉するしかないが、開発業者に権利が渡った段階では残すのは無理と考える。解除のときに樹林の一部を残していただくよう働きかけるか、一定の額で買い取るなどの工夫が必要ではないのか、お聞きする。
○後藤裕史都市部長
保存樹林が解除されてしまうことについては、所有者の意向を尊重せざるを得ない状況ではあるが、過去には保存樹林の敷地を市に寄附いただき、都市緑地や文化財として利活用させていただいているところもある。
保存樹林を継続していただくための働きかけに対し難色を示される所有者の方に対しては、一部だけでも買取りができないかなどの粘り強い交渉が必要であると認識はしている。
なお、この場合においても、緑地を取得するときは、良好な自然環境を形成しているかどうかや、買取り後に公益性の確保のために活用できる土地となり得るかなど、総合的な判断が必要であると考えている。
○2番 杉本啓子議員
今までの動きを見ていても、担当部署がばらばらで、連携が取れているとは思えない。
これらの保存樹林を解除する場合に、事前に茅ヶ崎市と交渉して緑地にする方法を担保するために、「みどりの保全等に関する条例」の中身について検討する考えはあるのか?
○後藤裕史都市部長
緑地の保全に関しては、日頃から部局を超えて情報交換するなど連携は図られているものと認識をしている。
みどりの保全等に関する条例の中身の検討については、保存樹林であるかどうかにかかわらず、前問でもお答えしたが、公有地の拡大の推進に関する法律に基づく取得を希望する地方公共団体等に土地の先買いを可能とする制度があるために、重ねて条例に規定する必要はないものと認識している。
市の南側の壊滅的なみどりの状況について
○2番 杉本啓子議員
条例の中身について検討する考えはないということだが、市の南側の壊滅的なみどりの状況 についてお尋ねする。
特に「環境基本計画」にあるみどりの保全のための取り組みでは、ほとんどが「みどりの保全等に関する条例」の活用によってみどりの保全ができると記載されている。
しかし、現在は、「みどりの保全等に関する条例」は何の歯止めにも活用にもなっていない。
今後、南側の壊滅的なみどりの状況をどうするつもりなのか。この状態のまま諦めてくださいということか、お聞きする。
○後藤裕史都市部長
「茅ヶ崎市みどりの保全等に関する条例」では、民有地のまま緑地を保全する手法として、保存樹林のほか市民緑地、みどりの保全地区の制度を設けており、制度を活用することで緑地の創出について一定の効果はあるものと認識している。
今後においては、より一層緑の重要性を土地所有者に十分説明し、密集市街地のまとまった緑は貴重であるということを繰り返し語りかけ、みどりの保全についての協力を繰り返しお願いすることが重要であると認識している。
○2番 杉本啓子議員
一定の効果があるのであれば、現在のような壊滅的なみどりの状況にはなっていない。
特に市の南側では、どうにかするのか、それとも諦めるのか、どちらの道を選ぶしかない、そこまで追い詰められた壊滅的な緑の状態になっている。
再度お聞きする。
⭐️市はどうにかするのか、それとも諦めるのか、どちらなのか?
○後藤裕史都市部長
市南部のまとまった緑空間が、延焼火災防止に効果があることは認識をしている。今後の方策として、ただいま答弁したとおり、より一層緑の重要性を土地所有者に説明していくこと、粘り強く対応していくこと、これが大切なのであろうという認識をもっている。
中海岸の南側で最大だった保存樹林
すべて伐採
ラチエン通りの保存樹林
すべて伐採
香川公民会の雑木林も残せなかった
東海岸南 古いお屋敷の緑も消える
南湖 古いお屋敷の緑も消える
東海岸北 古いお屋敷の緑も消える