市が自治会に責任転嫁した 防犯灯電気料裁判

市が控訴をしない理由のデタラメさ

茅ヶ崎市が二つの自治会を訴えた「防犯灯電気料金の返還」をめぐる裁判について、4月8日、横浜地裁で「市の請求を棄却する」判決があった。
4月25日の全員協議会で「市はこの判決に対し控訴しない」と議会に報告をして、記者発表した。

判決の主文は

・原告(市)の請求をいずれも棄却する。

と、茅ヶ崎市の請求をバッサリと棄却したものだった。

茅ヶ崎市は、「補助金が電気料金の支払いに充てられていない」「協定に違反する行為だ」と主張した訳だけど、協定書には「市は電気料金と修繕料金を負担する」とあるだけだし、補助金を受け取ってから具体的にどうしなさいと市から自治会に説明があったのでもないし、自治会からは報告書が毎年提出されているのだから、住民の共益費から電気料が支払われていたことなど、市は承知のうえで補助金を自治会に支払っていた。

長年にわたって、市は自分でやってきたことを問題にしたこともなかったのに、突然に「それは間違っている!違反だ!」と言い出したのだから、茅ヶ崎市は自分で自分がおかしいと訴えたようなものだ。

判決が出るまでに丸3年かかり、その間の弁護士費用など市は税金でまかなうので痛くも痒くもないが、市民側は100万円以上を支払うことになるという。「市は控訴しない」という判断は、判決内容からしても当然と思う。

しかし、市の記者発表に書かれている「控訴をしない理由」には奇妙さを感じる。そこからは、市の自分勝手な主張が透けて見える。



横浜地裁前

市は自らの協定違反をおそれて裁判に

記者発表にはこう書かれている。

「〜補助金が防犯灯電気料金の支払いに充てられていなかったという事実は、本市として容認できず、協定に違反する行為であると考えました。
そうしますと、協定を解除して補助金の返還を求めなければ、本市が違法に債券回収を怠っていると評価されるおそれがあると考え、本件訴訟の提起を行いました。」


市は、自治会が補助金を防犯灯電気料金の支払いに充てていなかったことを、「協定に違反する行為」と主張した。

ところが、その主張は自分に(市に)はねかえってきてしまった。

つまり、市は「協定に違反して」自治会に補助金を渡していたことにもなる。

そうなると、市は違法に税金を出費していたとして、裁判や監査請求で責任を追及されるおそれがある、だから先に裁判をおこすことで市の責任を回避することにした、、、

市は自分のミステイクを分かっていた

今まで、すべてはオープンに白日のもとで行われてきている。

裁判所も、「団地の住民がURに共益費として電気料金等を支払っていることや、自治会が市からの交付金を自治会の一般会計に組み入れていることは秘匿できる事項ではない」としている。

提出書類などから、市は分かっていたことでしょう、それで OK として補助金を自治会に渡してきたし、そもそも補助金を受け取ってどうしなさいという指導や説明もしてきてないですね、ということ。

市はそのあたりの不明瞭な仕事の責任が自分たちにあることは分かっていた。

それでも、市は自治会側の補助金の使い方が違反だと主張した、

ところが、違反して税金を出費していた市も責任を問われることになりかねない。市の主張は自分にはねかえってきた。市は責任を問われる可能性を回避しようとして、裁判をおこした。

(市だけでなく議会も責任を問われる可能性がある。)

なので、記者発表は次のようにしめくくられている。

「市の主張は認められませんでしたが、このような裁判所の判断を前提に考えれば、本市が防犯灯電気料金として両自治会に支払ってきた補助金は、防犯灯電気料金の支払いに充てられいたとみなすことができます。
すると、協定違反の事実はなく、本市として両自治会に補助金の返還を求める必要もありませんので、控訴する必要はないと判断したものです。」

何としれっとした市のいい訳かと思う。

もともとは「市の仕事に明確性がないこと」が問題を引き起こした。 

それを分かっていながら、市は自治会が協定違反していると主張して裁判を起した。そうすれば市が責任追及されることは回避できる。

判決では「協定違反の事実はない」となったのだから、市の仕事も違反していないし、だから市が裁判などで訴えられることもないと分かったので控訴しません、どちらに転んでも市はめでたし、めでたし、なんだろうか。



自治会にも見直しが必要な時代

冒頭で書いたように、茅ヶ崎市は自分で自分の仕事の不明瞭さを裁判に訴えたようなものだ。

にもかかわらず、市民側に責任転嫁するような主張を繰り返して、茅ヶ崎市の主張は裁判ですべて棄却された。

裁判所の判断は、ほとんどが自治会側の主張と同じだった。

自治会としては数十年ものあいだ、市の言うままに自動更新でやってきて、それで改善や変更を求められた訳でもないのに、ある日、突然、市が自らやってきたことがおかしいと騒ぎ出し、それなら市は改善策を自治会と話あえばいいものを、自治会の協定違反だからお金を返せと言い出して、挙げ句の果てに市が訴えられるおそれがあると裁判に持ち込み、市民を被告にして心労を与え、弁護士費用を自腹で支払わせた。

最初から市がURに補助金を渡していれば済むことだったのではないか?

ただ、「自治会のお金の使い方に問題はなかったのか?」という疑問も残ってはいる。

今まで慣例的にやってきたのだから自治会の活動費として使って問題はない、ということでなく、電気料金として明確に使用していると示せるように自治会も変えるべきだったという意見もある。

自治会も疑義をかけられないような自衛が必要な時代なのだから。



議会は裁判を回避できたはず

市は防犯灯の補助金を、自治会の口座に振り込むのが妥当として支払ってきた。

いったん自治会に振り込まれたお金なのだから、手続き上、自治会の収入に計上せざるを得ない。その後、どうしなさいとは協定書に書かれていないし、市も具体的にどうするよう指示したこともない。

想像してみてほしい。あなたが、たまたま自治会長になって、慣例的にやってきたことを引き継いだだけなのに、いきなり市から裁判を起こされ被告にされたら、、ロシアンルーレットみたいなものだ。

協定書には「この協定に疑義が生じたとき及びこの協定に定めのない事項については、市と自治会の協議のうえ決定する」と記されている。

全国的に見ても、URの団地のある地域では、茅ヶ崎市と同じように防犯灯電気料金を自治会に支払っている自治体もあり、あくまで市と自治会の話し合いで解決すべき問題なのになぜ裁判になったのか?

その理由が、記者発表資料から読み取れるような、市の責任逃れの姿勢からだとすれば、限りなく市の責任は重い。

自治会は行政ほどの専門知識は持てない。議会が市と住民のあいだに入り、的確に専門性をもって状況を判断して、クッションになっていれば裁判は回避できたはず。市と同様、議会の責任も重い。


裁判所の判決書は、たいへん分かりやすく、明快です。
詳細を知りたい方はこちらの記事で。

pinkgreen58.hatenablog.jp

(市の記者発表資料)