6/26 一般質問「緑のまちづくり基金とみどりの保全について」 

今回のポイントは

① 「緑のまちづくり基金」のガイドラインの変遷について
「緑のまちづくり基金」を何に使うのか、透明性が確保されず、その時々によって変更された勝手なガイドラインになっている。
 
② 保存樹林等の緑地を確保するための担保策について
今後も、これでは保存樹林を維持していかれない。市街地の保存樹林をこれ以上失わないために、どのような実効性ある施策を行っていくのか?

③ 市民からの提案について
市民から「緑のまちづくり基金」のあり方など、さまざまな提案があったが、なぜ真剣に検討しなかったのか? 今後、どのように市民への協力を求めていくか?



緑のまちづくり基金とみどりの保全について

処分等に関するガイドライン(案)の変遷について

◆12番(杉本啓子 議員)  

茅ヶ崎市の「緑のまちづくり基金」は、「緑のまちづくり基金条例」によって運用されてきた。
この条例には、「本市に存する緑地を市民共有の財産として保全するため」とある。

これまで、「緑のまちづくり基金」を使って、1992年から96年には松ヶ丘緑地を15億6660万円で、2009年には松浪緑地を1億6200万円で買い取っている。この時期は、緑のまちづくり基金は「市街地の緑地を買うため」であって、自然環境豊かな北部を買うことはできないと行政は明言していた。

しかし、コア地域の一つである清水谷の特別緑地保全地区の指定が行われた結果、2012年に処分のガイドライン(案)を作成し、基金は「北部の自然環境豊かな場所に活用する、市街地は使わない」と正反対に考え方を変え、清水谷を買い取っている。

その後、2013年に担当課は、また運用の優先順位を変えた。

そのときは、特別緑地保全地区とその候補地とコア地域、市街地における500平米以上のまとまった緑としている。ここで、「市街地における500平米以上のまとまった緑」を再び入れた理由は、貴重な保存樹林が売却されるのを防ぐため であったはずである。

その後、また運用ガイドライン(案)を変更。

2017年に緑のまちづくり基金の処分についてルールをつくるということで、みどり審議会で資料が配られ、翌年の審議会には、処分できる場所は「良好な自然環境を形成している緑地」となり、特別緑地保全地区とその候補地、茅ヶ崎市自然環境評価調査において、特に自然度が高いとされた地区と規定された。

このときに、前回入っていた、「市街地における500平米以上のまとまった緑」の記載は消えている。

 審議会で市民に対してパブコメを行うと約束したことも放置され、今度は森林環境譲与税基金が設置されることになったので、現在は再検討中 ということである。

今に至るまでずっと基金処分時の透明性が確保されていない。

なぜ基金のガイドラインについてこのような基本的な考え方のない変遷となったのか、まずお聞きする。

また、特に自然度が高いところなのか、市街地のまとまった緑なのか、担当課の中だけで都合のよいように基金が運用されていて、市民には全く見えていない。このような基本的な考え方がぶれて、その都度処分の取扱いが違う内容になっているにもかかわらず、市民が納得すると考えて施策を進めているのか、お聞きする。

◎佐藤光 市長  
緑のまちづくり基金は、市が総合的に判断して、残すべき緑地を取得するための財源として、昭和63年に「茅ヶ崎市緑のまちづくり基金条例」を制定し、一般会計の予算や寄附金などを積み立てて運用している。

基金の使途については、環境行政を広く網羅的に体系化している茅ヶ崎市環境基本計画(2011年版)において、基金を使用するルールづくりを位置づけ、基金のガイドラインの策定に向けた検討を行ってきた。詳細については担当の部長より答弁する。

◎榊原敦 都市部長  
 「緑のまちづくり基金」の使途は、良好な自然環境を形成している緑地の取得費及び取得した緑地の維持管理費に充てるときに取り崩すことができると、緑のまちづくり基金条例により規定されている。

良好な自然環境を形成している緑地の基準や、基金を使用する優先度を明確にするため、基金のガイドラインの策定に向けた検討を平成24年度から行ってきた。その中で、自然環境の保全活動に取り組んでいる市民団体の方々との意見交換を行い、あわせて、市の附属機関であるみどり審議会にも報告を行っている。

検討の過程において、市民団体の皆様から様々な御意見が寄せられ、みどり審議会からも相反する意見があったりしたために、関係者の合意形成が得られず、策定に至っていない状況である。

このような状況の中、令和元年には、国から森林環境譲与税が譲与されることになり、この使途と緑のまちづくり基金の使途とを改めて整理し、検討する必要が生じたことから、基金のガイドラインの策定を見合わせている状況である。

また、市民が納得する施策の進め方ができているかどうかという御質問に対しては、検討の過程において、市民団体の方々の御意見を伺いつつ、検討を重ねており、問題はないものと認識している。

保存樹林等の緑地を確保するための担保策について

◆12番(杉本啓子 議員)  

環境基本計画では、「重点施策の財政担保システムの確立」の項目に、失われる危険性のある貴重な自然を有する地域の公有地化などに効果的に「緑のまちづくり基金」を充てられるよう、必要に応じて茅ヶ崎市緑の保全及び緑化の推進に関する条例の見直しや、基金を使用する優先度を明確にし、透明性を確保するためのルールづくりを行う、と記載がある。

これが作成されたのが2010年。それからちょうど10年たったが、失われる危険がある貴重な自然を有する地域、例えばコア地域である長谷、行谷などの買取りに効果的に基金が使われているとは思えない。

また、基金の優先度を明確にし、透明性のあるルールができているのか。10年たって具体的な実行状況をお聞きする。

◎佐藤光 市長  
環境基本計画は、環境基本条例の基本理念の実現に向けて、環境の保全及び創造に関する施策を示すとともに、市の環境施策を総合的かつ体系的に定めたものであり、その重点施策の一つに財政担保のシステムの確立を掲げている。詳細については担当部長より答弁する。

◎榊原敦 都市部長    
財政担保システムの確立のための取組の一環として、「緑のまちづくり基金」を使用する優先度を明確にし、透明性を確保するためのルールをつくることや、基金の継続的な財源確保について検討してきた。

基金の優先度を明確にすることについては、緑のまちづくり基金のガイドラインに関するご質問に対しお答えしたとおりである。

基金の透明性を確保するためのルールに関しては、基金を取り崩して緑地を取得する際は、歳出予算に計上し、議会の承認をいただくことになるので、透明性は確保されるものと認識している。また、継続的な財源確保については、基金の充実を図るために、主にふるさと納税の寄附金を緑のまちづくり基金に充当できるよう、使い道の選択肢を追加し、継続的に財源が確保できるよう取り組んできた。


◆12番(杉本啓子 議員)  
特に、市街地の保存樹林を保全するために、何か考えがあるのか? 

現在、保存樹林は全部で28件となり、面積は35200平米で、平成30年から比較しても6件、11000平米も減っている。

香川公民館の雑木林もそうだが、南側でも広大な敷地の保存樹林が次々と消えていて、県下で最も緑地、公園が少ない上に、クラスターが起こる茅ヶ崎市で、市民にとって貴重な緑をこれ以上なくすことはできない状況である。これを担保するためにどのような実効性ある施策をするつもりか、お聞きする。

◎佐藤光 市長   
市街地の緑を残すための制度として保存樹林制度がある。この制度は、茅ヶ崎市みどりの保全等に関する条例第16条に基づき、樹木が健全で、かつその集団の樹容が美観上特にすぐれている樹林を地権者の同意を得て保存樹林として指定している。保存樹林に指定されている間は、その所有者は、樹林の保全に努めていただくが、市としても助成、助言などの支援をしている。

◎榊原敦 都市部長 
保存樹林の指定期間は5か年で、指定期間の満了時に指定を更新していただけるよう、所有者の方と協議をしている。市としても、指定している保存樹林は、できる限り継続して保存していただきたいと考えているが、私有財産であるので、所有者の御意向を尊重せざるを得ないことも多くある。

保存樹林の解除に対処する方法としては、市が買取りを保証するものではないものの、市が将来にわたって保全すべき緑地であると判断した場合に買い取る、ということを検討していくことになると考えている。

市内全ての保存樹林に対応することは、市の財政状況から困難であるので、良好な自然環境を形成しているかどうか、また、買取り後に広域性の確保のために活用できる土地となり得るかなど、総合的に判断していく。


◆12番(杉本啓子 議員) 
茅ヶ崎市が緑の保全について有効な施策がいまだに取れないのは、「みどりの保全等に関する条例」に何の歯止めもないことが大きな原因だと考える。

このような歯止めのない条例を通してしまった議会、緑の保全に対する有意義な市民の提案を条例に盛り込むことなく無視してきた行政、ともに責任がある。

これ以上の茅ヶ崎市の緑の減少を防ぐには、関連する条例について拘束力を盛り込んだ改正が必要と考えるが、市の方針を伺う。
 
◎榊原敦 都市部長  
「みどりの保全等に関する条例」の改正に当たっては、平成25年度から28年度まで4年を要し、その中で環境市民団体との意見交換や庁内検討会議、みどり審議会における審議及びパブリックコメント等の市民参加手続を経て議会へ提案し、ご承認いただき、施行している。

改正の検討の過程において、環境市民団体からは、緑地を保全するために土地所有者の土地利用を実質的に制限する規定を設けるべきとの意見があったが、私有財産に対して制限をかけることはできないため、本条例では規制をかけることはしていない。今後においても、緑地の保全に関する施策を土地所有者にご理解いただけるよう働きかけていく。 

まちづくりの基本的な考え方と市民からの提案について

◆12番(杉本啓子 議員)  

10年前の環境基本計画の策定時に、緑のまちづくり基金の在り方についての提言が、市民グループである環境市民会議ちがさきエコワークから行われている。

また、みどりの保全等に関する条例を策定するときにも、現在の保存樹林の制度では、市街地の緑地は保全することができないことから、担保となる制度が必要であるとの提案が市民から出ている。

また、緑のまちづくり基金条例についても、緑の保全等に関する条例と一緒に条例を改正し、充実した基金とするための提言も出ている。

しかし、それらの市民からの提案は全く考慮されなかった。

10年という年月がかかっても、まちづくりの基本的な考え方がぶれていて、市民に協力を求めることができないのが現状である。今回の香川公民館の雑木林、保存樹林も、数年前から地権者が市に買取りをお願いしていたのだから、市民からの寄附を募るなどの工夫で買うこともできたはず。市民からの力は強力で、行政だけではできないことも市民とならばできることが多数あるはず。

緑のまちづくり基金の処分に関するガイドラインは、こういった改善する機会がたくさんあったにもかかわらず、実施してこなかった行政側の責任は大きいと考える。今までの市民からの提案や市民への協力の求め方について、今後どのような改善をするつもりか、お聞きする。

◎佐藤光 市長  
 緑のまちづくり基金の使途については、条例により規定されているものであり、基金の在り方を検討する場合は、条例の改正についても視野に入れ、行うこととなる。その際は、茅ヶ崎市市民参加条例に定められたとおり、市民参加の機会を設けて、市民の提案や意見を考慮するものであると認識している。  
 

◆12番(杉本啓子 議員)  
自然環境や緑の保全の分野では、市民の協力がなければ、行政だけで維持することは今後ますます困難になる。いまだかつてない財政難が続くからこそ、市民に協力を求めて、何とか緑の保存を実現していく工夫が必要となる。そのためには、環境基本条例に定められているとおり、行政と市民と事業者の協働が必要になる。

現在の環境基本計画に位置づけられ、市民、事業者の意見をまとめ、環境施策の推進をする団体であった「環境市民会議ちがさきエコワーク」を行政側の一方的な判断で、なくしたために、市民からは、行政への様々な協力や提案ができない状況が今も続いており、改善されていない。

環境基本条例や環境基本計画に位置づけられている市民との協働については、今回、みどり行政を実施するはずの景観みどり課の「みどりの基本計画」には具体的な施策は記載がない。今後、どのように効果的な施策の推進ができるようなシステムを行政として考えているのかをお聞きする。

◎榊原敦 都市部長 

「茅ヶ崎市みどりの基本計画 生物多様性ちがさき戦略」において、「みどりと人々が出会う協働のしくみづくり」を基本方針の一つに掲げており、特別緑地保全地区である清水谷や赤羽根字十三図周辺における保全活動を市民団体や協力者とともに行っている。個別の市民団体や個人との連携により、協働がなされていると認識をしている。

今後は、緑の保全活動を次世代へ継承していくための人材育成の仕組みを構築したり、事業者や学校など教育機関での緑や生物多様性に関する事業を進めるための環境教育の場を増やしたりするよう取り組んでいく。 
 
◆12番(杉本啓子 議員) 
緑の保全について定めている各種の計画をつくるときに、外部への委託として、都市マスタープラン1475万円、みどりの基本計画885万円、環境基本計画1192万円、それに加えて審議会の経費、パブコメなどにかかる人件費など、市民の税金が予算として確保され、計画づくりに使われている。

そもそも2011年版の環境基本計画は、実施できる具体的な内容を記載した経過があるが、にもかかわらず、特に自然環境については実施されないことが多く、担保できていないものが目立つ。

なぜそうなったかと言えば、計画が環境政策課で、担当課が景観みどり課で、予算執行は公園緑地課で、市民はそれに翻弄され、たらい回し状態が続いているからと考える。

さらに計画を実行する段になって、実行する予算がない、財政的に厳しいからできないと言っている。お金がないからできないというのは、あってはならないことで、それならば、最少の金額で最大の効果を求めて、市民の協力をできる限り求めるなど工夫して実行されなければ、計画の意味がない。

また、これからも自然環境の保全には市民の力が必要になる。

保全を推進するルールや手法を市民と一緒に考えていかないと、この先、無理でしょう。ところが、行政のほうから市民の協力も断ち切ってしまっている。計画をつくるところだけ税金を使って、初期投資をして、でも、実行できないなら、これを10年スパンで考えたら、計画づくりにかかったお金を積み立てて、小さな緑地や保存樹林の一つでも買い上げてもらったほうが担保策として市民は幸せと思うが、市の見解を伺う。
  
◎榊原敦 都市部長  
茅ヶ崎都市マスタープラン、茅ヶ崎市みどりの基本計画・生物多様性ちがさき戦略、茅ヶ崎市環境基本計画は、法令または条例において、計画を定めることが位置づけられている。
これらの計画は、市民、事業者、行政が今後のまちづくりの方向性を共有するために必要性の高い計画であり、費用対効果を十分に検討した上で策定している。市としては、計画の基本目標を実現させるために、限られた財源の中で優先順位をつけるなど適切な配分を意識し、様々な工夫をしながら緑の保全を推進していく。 
 

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