回答時間のトータルわずか9分!
一般質問で、議員が質問に使える時間は30分です。
議員が30分質問すると、市長側からの回答も30分ほどが平均的。
ところが、私の一般質問「柳島スポーツ公園について」では、市側から返ってきた回答のトータル時間は、わずか9分!という前代未聞の短さでした。
なぜ、わずか9分間なのか?
理由はいくつかあります。
まず、市側に答弁の根拠となる公文書やメモなどの記録が、ほとんど手もとにないこと。文書作成を怠り、録音データも早々に消去したりと、根拠となる記録がないので答えられないのです。
なぜそうなったかという経緯の分かる文書がない状態。
しかし、この厳しい財政状況のなかで、市民は毎年2億円〜3億円の借金を、これから20年間、柳島スポーツ公園のために支払っていくのです。
市民と意見交換もせずに、「PFI 方式」という事業手法を市は選択しました。
その責任を誰が取るのかはっきりしないまま、市民はお金だけを支払うことになります。
何が問題? 柳島スポーツ公園
茅ヶ崎市の厳しい財政状況の中、約75億円で落札され、周辺整備を含め100億円を超す事業となっている柳島スポーツ公園には、「身の丈に合ったスポーツ公園なのか?」「失敗ではないか?」という声を聞く。
高い駐車場料金
他の公共施設のように「駐車料金を2時間無料(減免)にしてほしい」という利用者の要望が多く、市として実現可能なのか質問した。
市からは、要求水準書のなかで「事業者は料金の徴収をすること」としているので、市が2時間無料とすることはできない、という回答だった。
そうなると、市は最初から2時間減免が不可能な契約を自分から提案していることになる。(もちろん市民との事前の意見交換はなし。)
駐車場料金は事業者の収入になる。(市の収入ではない)
不便な立地の上に駐車場料金が高いのでは、ますます利用者の足も遠いて、施設の稼働率も低いままという状態になる。
それ以前に、市民の賛同が得られない。
市民に伝えなかった重要な情報
①事業手法を PFI に決定した(市でも初めての手法で、市民は今までと何が違うのか分からない)
②どの程度の金額で建設、維持管理するのか(途中で予算がふくれ上がった)
③事業者に優先利用枠を与えること(競技場、テニスコート等の施設を、土日・祝日は4分の1まで、平日は3分の1まで、事業者は優先的に利用できる。)
④事業者はスクールを行う(収入は事業者に入る)
⑤公園内で事業者が独立採算で事業する。
市は、こういった重要なことを、事前に市民に伝えず、意見交換もしなかった。
もちろん、パブリックコメントも取られていないも同然。
公共のテニスコートなどで、事業者が市民より優先的にコートを確保してスクールを行う、というのは周辺市にも前例がない。
議会に報告したから、市民に報告した
上記は、市が広く市民と情報を共有し、話し合わねばならない重要な事柄ばかりだ。しかし、残念ながら、市民と共有も話し合いも行われなかった。
では、どうしたのかというと、
①市議会議員向けに事業手法に関する説明会を開催した
②全員協議会で最適事業手法の選定経緯について議員に報告した、
③全員協議会で実施方針案と要求水準書案について議員に説明した、
だから、市民にも情報を提供している。というのが市の回答。
はじめて傍聴に来た、という市民でも「市民参加がなくても議会に報告した」と市が回答した部分に驚いていた。
議会ははじめてという市民でも、それはおかしいと思うのだ。
結局、市民と話し合わなかったことは、圧倒的なリサーチ不足となって、稼働率の低さにつながっている。
稼働率の低さは誰の責任?
開園当初から、稼働率の低さ、集客の少なさが指摘されている。
市は、利用実績及び稼働率の報告を事業者より受けており、前年度を上回る利用実績と回答しているが、前年度も今年度の数字も落第点の低さだ。落第点どうしを比較しても意味がない。
では、柳島スポーツ公園の運営や経営についての責任は、事業者にあるのか、市にあるのか?
市民サービスが満足に望めないのならPFIである必要はない。
責任を持って市民サービスを行うのは、事業者と市のどちらなのか?
市の回答は、「柳島スポーツ公園は公の施設なので、茅ヶ崎市が責任を持って市民サービスを行う。しかし、事業手法としてPFI事業を選択したので、事業者も責任を持って市民サービスを行う」というものだ。
でも、どっちも責任を持ってやってないよね、という話。
法違反で設置された委員会
柳島スポーツ公園の「PFI事業者選定委員会」は、地方自治法に違反して設置されている。
(違法な委員会の中で、総合評価方式入札の提案内容の採点などが行われた。)
①この選定委員会では明確な議事録がつくられていない。(ごくごく簡単な摘録が数枚つくられているだけ。)
②早い段階で委員会の録音データが消去されている。
③採点の原本が破棄された。( 各委員が採点を書き入れた原本は、事務局が集めて採点結果表に入力し、委員に入力内容の確認を行った後に破棄したというのが市の説。)
市は、HPに審査講評をのせていると答えているが、特に自由提案の30点満点など、なぜそのような極めて高い評価になったのか、委員会でどのような話し合いがされたのか、どこがどう評価されていったのか、そういったいきさつ全般についてが分からず、メモもない。逆にこれでどうやって審査講評が作れたのか?
適切な公文書を作成していない
なぜ公文書管理の責任として、あるいは説明責任として、明確な議事録がきちんとつくられなかったのか?
柳島スポーツ公園は、市でも初めてのPFI事業であり、総合評価方式で向こう20年間の契約となる異例なケース。後になって検証が必要になってくるのは、市も容易に想定できたはずだ。
これだけ文書や記録が残っていないのでは、これから20年間、借金を払っていく市民に一体何を根拠にして説明したり、検証するのかと思う。
すぐさまデータ破棄では、後日に入力内容を書きかえられるリスクも想定される。その適切な記録が残されていないというのは不自然でもあり、採点の原本が破棄されたり、録音データも消去では、何かしら証拠や記録の隠滅と受け取られても、やむを得ない。
実施されていない入札提案がある
今回の総合評価方式の入札は、提案7、金額3という割合で、事業者の提案内容が大きなウエートを占めている。
選定委員会では、送迎バスの運行、大会・イベント時のパーク・アンド・ライドの実施、自由提案に高評価がついた。特に自由提案事業には、30点満点の破格の得点と高評価がついて入札結果を左右している。
しかし、実行されていない入札時の提案はいくつもある。機能していない提案も多い。
自由提案については、事業契約書の中で、事業者は実施状況や財務状況など市に報告するとしているが、市は内容を検証しているのか? 実行されていないならペナルティーを課すのが当然だ。
また、柳島スポーツ公園は、スポーツ施設だけでなく「緑豊かなスポーツ公園」として都市計画決定されている。生物多様性に配慮した「緑豊かな公園」は実現されているのか?
市は条例の解釈を間違えている
行政文書として議事録をどう作成するかについて。
PFI 事業者選定委員会について、市は「摘録をつくっているので議事録はつくっている」という説明をしている。しかし、この摘録はごくごく簡単に要約されたものにすぎない。
市は、茅ヶ崎市情報公開条例第5条第3号に規定されている非公開情報に該当するから摘録にした、と市長回答を出している。
ところが、この情報公開条例第5条第3号というのは、すでに存在している行政文書について非公開とすることを認める規定である。
議事録を作成する場合に、委員会のやりとりなどが非公開にする理由に該当するからと判断して、情報の記録を省略することを認める規定ではない。
そうなると、今回、選定委員会の明確な議事録がつくられなかったのは、市が条例の解釈を間違えていたためということになる。
次に、もう1点、確認したい点がある。
「茅ヶ崎市行政文書管理規則」の第6条では、「事務処理に当たっては、処理の内容(意思決定の経過及び行政文書を管理するために必要な事項を含む。)を記録した行政文書を作成しなければならない。ただし、軽易な議案のときは、この限りでない。」と規定している。
PFI事業者選定委員会は、巨額な事業についての事業者を選定するための役割を担っていたのだから、これは軽い議案であるはずはない。
茅ヶ崎市の文書管理規則に従って、たとえそれが摘録という形であっても、意思決定の経過を確認できるように記録した行政文書、つまり議事録を作成しなければならなかったと思うが、市はどのように考えているのか?
さらに、「茅ヶ崎市附属機関及び懇談会等の設置及び会議の公開等運営に関する要綱」という長々とした名前の要綱がある。
この第17条の4に「議事録は、会議の概要又は発言内容を記録するものとし、会議の経過及びその結果が分かるように記載するとともに、その形式は附属機関が決定するものとする。」とある。
ここでは、「会議の経過及びその結果がわかるように」としているが、市長などが定めた規則である茅ヶ崎市行政文書管理規則では、「意思決定の経過がわかるように記録した行政文書として作成しなければならない」としている。
つまり、単に会議の経過や結果がわかればよいものでなく、意思決定の経過という大切なことを記録しなさいとしている。
今現在の要綱にあるような曖昧な書き方では、的確な議事録が作成されないということがまた繰り返される。要綱より規則が上だが、市はどのように考えているのか?
写真:USオープンのハードコート
テニスコートのサーフェス変更について
落札事業者が提案したコートサーフェスは、デコターフというハードコートだった。USオープンや、オリンピック、有明などに使用されている世界基準で通用するサーフェスだ。ジュニア選手を育てたり、車椅子の大会にも向いているが、一方で、軟式テニスにはプレーに無理が出る。
市は要求水準書に、「コートの種類は選定事業者の提案とするが、一般利用や大会開催時などを考慮して選定すること。」として、事業者からハードコートの提案があり、それを委員会は減点しないのだから、サーフェスを変える必要はない。
しかも、市は「協会の意見を聞いているから市民の意見を聞いている」「もちろん協会の意見を取り入れて要求水準書をつくった」と回答している。
なぜ後になって、あれほど激しいクレームが関係者から出て、最終的に人工芝に変更になったのか矛盾があり、意味が通じない。
人工芝のコートは足腰に優しいと高齢のプレーヤーに人気があるが、プロの評価はおおむね逆で、車椅子テニスにとっては、方向転換に力が必要で楽なコートではない。
結局、人工芝に変更しても、閑古鳥が鳴いている稼働率なのだ。それなら、世界基準のデコターフの公共コートは希少価値があり、車椅子テニスやジュニアへアピールすることが可能だったと思う。結局、その場しのぎで何のコンセプトも残らなかったのだが、市はどう考えているのか。
いずれにしても、強風や突風が吹きすさぶ場所にスポーツ公園を作っても、満足なプレーはできない。大金をかけて設備する価値のある立地条件と思えない。
まとめ
以前に森友問題があったときに、若手の法学者である木村草太氏の解説が話題になり、ツイッターなどで共有された。木村草太氏の解説は、そのまま、柳島スポーツ公園についても当てはまる。
「根本的には、いかに公文書をきちんと残すかを、日ごろからやっておくかどうかが大事。書類がない、記憶がないで済むのでは事実解明がされない。今回に関しては、適正に文書が残されていないこと、そのものの責任を問わなくてはいけない。わからないのであれば、わからなくした人の責任。これでいいという規則であれば、規則をつくった人の責任。」