「市立病院の経営形態が変わります! 」ちがさきレポート vol. 10 ③

 茅ヶ崎市立病院は、平成28年〜30年度に 約28億円の損失を計上し、このままでは現金残高が底をつくという状態になりました。

「経営計画で見込んだ以上に投資したものの、 収益に結びつかなかったこと」が課題として浮 き彫りになり、市は令和元年に「市立病院リバ イバ ルロードマップ」を作成。

市税から経営建て直しのための追加金を負担して、病院の経営改善に取り組むなか、新型コロナウイルス感染患者の入院受け入れ病院として奮闘する 日々が続きました。入院・外来ともに患者数が大幅に減少し、医業収益にも大きな影響を与えました。

現在は、感染患者受け入れの病床確保への国からの支援金(空床補償)により、茅ヶ崎市立病院に は令和4年度9月末までに約30億円の補償が確定し、減収分以上の補償がされている状態です。

これにより、現金残高は 41億 7 千万円(令和4年6月末)となり、プラス10億円の黒字の状態になっています。



「一部適用」から「全部適用」へ

 しかし、国からの補償金は一時的なものであり、茅ヶ崎市立病院の経営の問題点として、
• 医療現場への指示が明確になっていない
• 現場に任せきりで、具体的な数値目標が示されてない
• 改善してもしなくても評価は変わらず、モチベーションが上がらない
• 他の自治体病院と比べてお役所的である

などが浮かび上がり、病床利用率が低い、委託料が高い、経営分析をする職員が育たないなど課題もあります。
 
 令和3年、市立病院の組織改革の検討が行われ、「市立病院在り方検討委員会」を設置。 茅ヶ崎市立病院の経営形態を、令和5年4月から「地方公営企業法の全部適用」に移行することになりました。

「一部適用」から「全部適用」に変わる一番の違いは、経営責任者が「市長」から「事業管理者(市長 が任命)」に移ることです。
新たに設置する事業管理者には、組織、人事、予算などの病院運営の権限が与えられ、その責任で経営体制を作ることで、スピード感をもって経営改革が進められるとしています。

市立病院の職員(医師、看護師、技師、薬剤師、事務職など)は公務員のままで変わりありません。

なお、市立病院は市が経営する「公営企業」なので、病院の経理は特別会計として一般会計から独立させています。

その一方で、今現在の「一部適用」の課題はそのまま残ることになります。
1 職員定数の制約

職員の定数(看護師は 60%位を占める)に制約があることは変わらず、医師や看護師などの採用・配置を機動的に行うことが困難。

2 経営状況に応じた給与体系

公務員給与制度での一律の給与のため、職員のモチベーションの観点からも課題があります。 また、人件費を経営状況に応じた給与とする場合は「地方独立行政法人化」を検討する必要があります。



職員が公務員でなくなる「独立行政法人化」

 「一部適用」から「全部適用」に移行して、それでも経営課題を解決できない場合は、「地方独立行政法人化」などへの移行を再検討する、としています。

市の病院であることは変わりなく、救急、 小児科などの医療は確保できます。

病院事業は市の組織から独立し、市が 100% 出資する法人となります。

大きく変わるのは、看護師、 医師など職員が「公務員」から「非公務員」になることです。 経営責任者は理事長(市長が任命)になり、病院経営に関するすべての権限が付与され、理事長の 責任のもとに病院を運営していきます。
職員定数の制約はないので、医師や看護師などの採用・配置や給与体系の見直しなど、理事長の責任で行われます。

選ばれる病院になるために

 しかし、どのような経営形態になろうとも、大切なのは、市立病院が「選ばれる病院」になること です。

そのためには、まず、患者さんファーストの病院であることです。病院の職員全体が「患者さんのために何をすればいいのか」考えてくれているのかどうか。利用者である患者さんも敏感に察知します。

その次に、働きやすさという職員ファーストも必要で、医師と看護師の風通しのいい連携ができていなければ、良い医療を提供できません。

あくまで患者さん主体の医療看護をどのようにしていくのか、市立病院が目指すビジョンやミッショ ンはどこにあるのか、今までの曖昧な責任所在でなく、リーダーシップを持って職員全体の意識を 変えていけるのか、市民は注目しています。