いったい何で茅ヶ崎市の財政は厳しいの?
「茅ヶ崎市の財政は厳しい」「財源が足りない」
という市の回答、昨年から何度も耳にします。
ではいったい、何が原因でこんなにも厳しくなっているのでしょう?
ご好評を頂いた「知ってビックリ!ちがさき財政」に続いて、パート2では、茅ヶ崎市の厳しい財政の原因を、分かりやすく解説していきます。
茅ヶ崎市の財政は豊かなの?
「県内16市・市民一人当たりの市税負担の状況」というデータがあります。
茅ヶ崎市が自分で得ることのできる収入のほとんどは市税で、市民税(個人・法人)や固定資産税などを合計したものです。
市税を人口で割ったものが「市民一人当りの市税負担」で、その金額が多いほど市の財政状況は豊かという目安になります。
茅ヶ崎市は、県16市のうち12位。(令和元年度)
市内に企業が少ないため法人税は市税の4%と僅かです。
ちなみにトップ3は、厚木市、鎌倉市、藤沢市。
さらに、「市民一人当たりの一般会計歳出」を見てみましょう。
市の1年間の支出が「歳出」で、市民一人当たりに使っている金額は、茅ヶ崎市は16位(約30万円)と毎年のように最下位です。
なんとなく、茅ヶ崎のイメージから財政は豊かであると思っている方が多い、これも茅ヶ市の特徴でしょう。
収入は増えないのに、支出や借金は激増・・・
10年前に比べると、令和元年度の市税収入は横ばい状態です。
その一方で、一般会計の歳出は733億円で、117億円増えています。
収入が20億円程度増えても、支出が117億円増えたのでは、当然台所は苦しくなります。
支出が増加しているトップ5は、扶助費、普通建設事業費、物件費、人件費、補助費です。
それを、ひとつひとつ見ていきましょう。
①「扶助費」の激増
子ども手当、保育所の運営、小児医療費の助成、生活保護費など福祉的な費用です。10年前には104億円だった扶助費が、令和元年には194億円と100億円近い激増です。
②「普通建設事業費」過去最高額に
平成27年度は103億円、平成30年度は106億円と、 普通建設費は過去最高額に達しています。
市庁舎の建て替え、柳島スポーツ公園、うみかぜテラス、市民文化会館の再整備、校舎の大規模改修など、建設事業に使ったお金です。
✴️ココがポイント: この建設費の財源として発行した市債(借金)の返済がこれから本格化していきます。
③「物件費」いったん増えると減らない
新しく施設を建設すれば維持管理の費用も増えます。
いったん公共施設を作れば、支払い続けなければならない費用です。公共施設をドンドン作れば市民にとっては便利かもしれません。しかし、同時にそのツケも必ず回ってきます。とうとう100億円の大台に乗りました。
④市長・職員・議員の「人件費」
平成29年度に145億円と過去最高額を記録し高止まりの状態です。
職員数は10年前の1857人から、令和2度には2262人へと405人増加しています。
⑤「補助費」87億円
増加する一方の補助金 が市の財政を圧迫しています。
市民生活に何が本当に必要な補助金なのか、見直しが求められているお金です。
自由に使えるお金はない(経常収支比率)
市税のように使い道が自由な収入のなかから、借金の返済(公債費)、人件費、扶助費、物件費など、必ず支払わねばならない費用(義務的経費)に使う割合が「経常収支比率」です。
平成元年度の茅ヶ崎市の経済収支比率は、とうとう99.4%という、かつてない厳しい数字 になりました。この数字が高くなるほど余裕がない状態となります。(100%を超えたら破産状態)
財政難は新型コロナ感染の前からです!
昨年1月、市は記者会見を開き、これから続く厳しい財源不足に対応するため「財政健全化緊急対策」案を発表しました。
注目してほしいのは、このタイミングは「新型コロナ感染が拡大する前」だったことです。
つまり、新型コロナ感染の影響前に、すでに市の財政は未だかつてない厳しい状態に追い込まれていた訳です。
では、なぜ厳しい財政難に追い込まれたのでしょうか・・・?
普通建設費の大幅な増加 が原因です。
市は財政の厳しい理由として、次の2つをあげています。
①扶助費の増加
②市債(借金)の返済額の増加
扶助費の増加は、全国的な傾向で、財源として国・県からの支出金も入ります。
茅ヶ崎市特有の財政難の原因は、やはり「普通建設費の大幅な増加」です。
普通建設費が増加すれば、財源となる市債(借金)も増加する。
そして、市債(借金)の返済額が増加します。
上の表では、黄色い部分が「普通建設費」です。
平成26年〜平成30年度の5年間に大幅に増加しています。
この5年間の合計は447億円となり、平成30年度は106億円と過去最高額になっているのがわかります。
市庁舎の建て替え、柳島スポーツ公園、うみかぜテラス、市民文化会館の再整備、校舎の大規模改修などで「普通建設費」が大幅に増加しました。
そして「普通建設費」の財源となるのは、市債(借金)です。
上の表は「市債発行額の内訳」です。
ブルーの部分が建設事業費の借金になります。
普通建設費が増加した5年間と、市債(借金)の増加した5年間がシンクロしていて、同じタイミングなのが分かります。
特に、普通建設費が106億円と過去最高額になった平成30年は、過去最高額の借金になっています。
借金の返済額がこれからピークに!
借りたお金は「返さねばならない」のが現実。
では、いつ返すのでしょう・・・?
「これから!」です。
借金の返済額が、毎年60億円に急増し、高止まりのまま支払い続けていくことになります。市の財源も毎年数十億円が不足し、次の世代に手痛いツケとなります。
☆市税が大幅に増えることは期待できない
☆コロナ感染の影響で市税収入はダウン
☆借金の返済額がこれからピークを迎える
この3つが、これから重なるのです。
令和3年度 予算編成
新型コロナ感染の経済への影響で、令和3年度の市税収入は約22億円のマイナスが見込まれ、過去に例がない厳しい予算編成になっています。
市長公約も例外なく見直しを迫られています。道の駅はオープンを令和7年に延期。中学校給食の実施は未定です。
子ども医療費は、コロナ対策として所得制限で今まで対象外だった世帯にも拡大して助成します。(期間限定)
総合計画(実施計画)は、作成を2年間先送りします。
理由は、財源の裏付けが取れないためで、今後2年間はコロナ感染の影響や社会・経済情勢を見ながら事業方針を定めていきます。
厳しい経営状態の続く市立病院は、経営形態を変えようとしています。
「ごみの有料化」の実施にともない、コロナ感染の影響もあり「戸別収集」の声が高くなっています。
多くの予算や人的資源をコロナ対策に費やすという、これまでと違う市政運営が続いています。どの事業を優先とするか、非常に厳しい「優先順位」をつける作業の連続になっています。
《ちがさきレポート後記》
令和3年度の予算委員会では「新型コロナ感染の影響で市税が減収し、財源が厳しい」という行政側からの答弁が目立ちました。
でも、本当にそうなのでしょうか?
昨年1月、市は「財政健全化緊急対策案」を発表しました。
私は議員になる前、「このままの財政運営では必ず危機を迎える」と行政や議会に訴えてきました。令和元年の市議会議員選挙で、公約に「財政運営の転換」を入れたのは初出馬の私だけでした。
コロナ感染の前から、行政や議会が危機感を持って、身の丈にあった財政運営に転換していれば、借金返済がここまで急増することはなかったし、コロナ感染で市税の減収になったとしても、ここまで追いつめられた状況にならなかったでしょう。
今、市が行っている作業は「断しゃり」のようなものでしょうか。
一度、棚にぎゅうぎゅうに押し込めたものを外に出し、必要なものを棚に戻す・・・
令和3年度、優先順位として何を市がピックアップして、棚に戻すのか・・?
すでに、移動図書館車「しおかぜ号」の巡回事業も廃止が決定されました。
「みどりや公園の保全」についても大きな懸念を持っています。みどりと公園が県で最低レベルの茅ヶ崎市。その予算はさらに削られています。
茅ヶ崎市議会議員(無所属) 杉本けいこ
1959生 松浪小・松浪中の茅ヶ崎育ち
県立鎌倉高校(父の転勤のため福岡・筑紫女学園高校卒業)
武蔵野美術大学 造形学部油絵科 卒業
テニス歴40年
ちがさき市民オンブズマン 設立(2015)代表理事
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