PFIは失敗なのではないか?
柳島スポーツ公園は市で初めてとなる PFI 事業手法を取り入れたが、昨年3月の開園以来、稼働率は思うように延びていない。
「失敗なのではないか?」という声も市民から出ている。
茅ヶ崎市の予算規模から見て、巨額の税金投入でありながら、慎重な議論を重ねることなく議会を通した責任も重い。
駐車料金に免除がないのはここだけ
利用者の足が遠のく原因になっているのが駐車料金。
1時間/200円 最大料金 平日600円 土日祝900円
市内で全時間が有料になっているのは柳島スポーツ公園だけ。他は1~2時間分は免除されている。
駐車料金が免除になるのは、事業者のレストランや教室などを利用する場合で、一般的にテニスコートなど利用する場合は免除がない。
駐車場料金は市の収入でなく事業者の収入となる。
問題は、駐車場料金などに市がリーダーシップを取れない(取らない)無責任な態勢になっていること。
いつ決まったの? 事業者の優先利用とスクール
市民利用者から見れば、公共の施設なのに何で事業者がこんなに優先利用できるのか理解できないだろう。
ゴールデンウィークでさえ、市民より事業者が優先して使っている。
何でこうなってしまったかといえば、競技場やテニスコート施設について「事業者の優先利用枠」を市が作成。また、市が要求水準書に「事業者の独立採算事業として、スポーツ教室を実施すること」と定めたため、市民利用の多い時間帯や休日でも、事業者が市民より優先して使うことができる。
市が市民への相談なしに勝手に定めた、といえるもの。
市は「土日にコートを取りにくいという認識がある」と認めているにかかわらず。「そんなこといつ何で決めたの? 」と思うのだが、開園するまで市民に知らされない内容だった。
なので、他市の市営施設に較べて、利用者は事業者のスクールやトーナメントによって、テニスコートや競技場の利用を制限される。
借金増えた、身の丈に合ったスポーツ公園?
PFI 事業で民間力を活用という説明は市民には分かりにくい。
べつに事業者が自腹で施設を作ってくれるのではなくて、土地の購入費用、設計・建設費用、維持管理費、修繕費など、すべては税金でまかなわれる。
用地取得費や業務委託費などで、約21億7463万円。柳島スポーツ公園整備事業として事業者が落札した金額は74億8758万円(税込)。落札価格には、建設費とこの先20年間の維持管理・運営費と修繕費が含まれている。
一種の借金の形態と考えた方が分かりやすい。
合計すると 約96億6000円で、その他の周辺整備を含めれば100億円は超えている。
平成29年の「総合計画審議会」の資料では、「市役所の建て替え」と「柳島スポーツ公園の建設」によって、市の借金が増大していると報告されている。
この規模のスポーツ公園が、本当に市民に必要だった?
こういったことも市民と市で話し合われないままの入札だった。
不透明な入札
柳島スポーツ公園整備事業の入札は、提案内容7、価格3の割合で、「自由提案」など提案内容を重視する総合評価方式だった。
ちなみに、入札価格では次点のミズノが約2億8000万円も安かった。一般的な競争入札ならミズノの落札になるが、「自由提案」の採点に大差がついて逆転となり、亀井ホールディングスが落札した。
入札の不透明さが指摘されるのは、自由提案の配点だけが30点と飛び抜けて高く(その理由も不明)、落札事業者を決める採点委員会で、いったいどのような話し合いがあって評価・採点されたのか、その経緯が明確に分かる議事録や録音データが存在していないから。
なお、採点委員会は違法に設置されている。(市の監査委員が地方自治法違反と認めた会議と同様。)
肝心な部分の得点が低い
入札全体の採点を見渡したときに、気になる傾向が浮かび上がる。
スポーツ公園を安定して経営するために大切な「収支計画」や「維持管理」といった項目は、次点の事業者(ミズノ)の得点が高いのだ。(というより亀井ホールディングスが一番低い。)
スポーツ公園を安定して経営する専門性を重要視しなかったことになる。
次点のミズノが優れていた提案
★入札金額 (約2.8億円安い)
★収支計画
★リスク管理計画
★環境への配慮
★工事管理・建設における工程計画
★建物の修繕計画
★維持管理業務
その一方で、亀井ホールディングスが満点の評価を受けた「自由提案」は、独立採算でレストラン、マッサージ室、自転車販売、スタジオなど事業を公園内で行うというもの。稼働率は伸びず機能していない提案も多い。
落札事業者が優れていた提案
★地元経済社会への貢献
★公園計画
★駐輪場・駐車場
★その他のすぐれた提案
★自由提案施設
★自由提案事業
満点評価に見合った機能していると思えないサイクル・ステーション
クラブハウスといっても、市民がくつろげるスペースはわずか
市民は蚊帳の外だったんです
「いったい、そんなこといつ決まったの?」
そういう内容の多い柳島スポーツ公園。
それというのも、入札・建設をはじめる前に、「一度も、ただの一度も」市民全体を対象とした説明会や意見交換会が開かれなかったから。
本来ならば、事前に市民と市のあいだでスポーツ公園施設の方向性を話し合い、利用者ニーズをリサーチして「要求水準書」に反映する、という手順になるはずが、茅ヶ崎市はいきなりパブコメ(それもアンケートレベルの)、それでおしまいだった。
計画の早い段階から市民は参加できなかったということです。
前市長は「そんなはずない」と言ったが・・・
「市民参加を怠ったための稼働率の低さとは思っていない」
「市民に方向性を伝えている、その経過の資料、プロセスをまとめている」
と言って、前市長は資料を作成してくれた。でもその資料を見ても、市民全体への説明会や意見交換会は一度も開かれていなかった。
スポーツ公園周辺の自治会や地権者を対象とした説明会は開かれていても、全市の利用者市民を対象としての意見交換の場はなかった。
さらに、市は「関係団体の意見を聞いている」と言っているが、記録にメモも残していない有様。
公園内に車道を通す設計が高く評価されているが理解できない。公園面積は最小しか取れていない。
PFI という新しい借金形態
柳島スポーツ公園の建設は当初の予定から遅れ続けた。
「非常に厳しい財政状況」というのが延期の理由だった。
市役所の建て替え、浜見平地区の整備事業などが続き、市役所の建て替えをめぐっては直接請求になった。その時、柳島スポーツ公園の建設計画も進んでいたのになぜか表面化しなかった。
「非常に厳しい財政状況」と念仏のように繰り返しながらも、100億円超の巨費を投じて市の借金を増やすのは訳が分からない。
また、柳島スポーツ公園の入札時期には、「ホノルル姉妹都市提携」で、市長・副市長をはじめ職員・議員は54回分のホノルル参りを繰り返していた。(厳しい財政状況なのに?)
柳島スポーツ公園は、民間への借金というかたちで民間資金を利用する。当然、借金なので市は利子をつけて税金で返済する。(民間への借金なのでかえって高くつくのでは?という意見もある。)
《事前に意見交換・説明のなかったこと》
①市営公園と異なる、市で初めての PFI 事業手法になること
②事業者の優先利用枠を作ること
③事業者のスクールやトーナメントが行われること
④駐車場の料金が全時間有料
⑤どれぐらいの総工費とするのか(当初の計画予算の倍になった)
⑥公園内で事業者が自由提案事業を行うこと
ほとんどすべて決定してから市民への事後報告だった。パブコメを取るときも、以上の説明はなかった。
まとめ
柳島スポーツ公園は、どういう公園をめざすのか、めざしたいのか、市民と話し合わなかった、市民からヒアリングをしなかったという圧倒的なリサーチ不足。
結果的に市民ニーズが反映されていないこと。
あれもこれも、市民は蚊帳の外、何も説明がなくてここまで来てしまった。すべて事後報告では利用者市民が怒るのは当たり前。
「茅ヶ崎市の典型的な問題点」が柳島スポーツ公園に反映されている。
★市民ニーズは、どこに反映されているのか分からない
★計画への早い段階での市民参加がない
★市民への事前の情報提供がない
★行政サイドと関係者団体だけで話が進められている
★市か事業者なのか、経営責任の所在が分からない