茅ヶ崎市では13年もの間、街なかの緑地取得はゼロであり、緑地の買い上げに手を打てないまま、緑地が失われていることが分かった。
市のJRの南側(海岸側)は、地震災害時には、県で最大の延焼火災地帯(クラスター)となっている。延焼を食い止める緑地や公園などオープンスペースが非常に少ないまま住宅が密集している。
最近では、茅ヶ崎市の巨大な延焼火災地帯(クラスター)の存在を、市は情報として出さなくなっているように思う。ひとたび同時多発火災が起きた場合には、ラハイナのような延焼になる可能性がある。
もちろん、こんな街にしたのは、行政の責任だ。
場当たり的な「緑のまちづくり基金」の使いみち
13年もの間、街なかの緑地取得はゼロと分かったのは、令和5年3月議会に「緑のまちづくり基金」の使い道を変えるための議案が出されたのがきっかけだった。
「緑のまちづくり基金」は、開発などによって年々減少する市内の緑地を、市が取得する場合に、その資金にあてることを目的に制定された。
基金を使って、1992~96年に松が丘緑地を買い上げ(15.6億円)、2009年には松浪緑地を買い上げた。(1.6億円)
2009年に松浪緑地を買い上げてからは、13年間ものあいだ、市街化区域の緑地の取得はゼロであり、実績がない。
それ以降は、緑のまちづくり基金を何に使っていくか、運用のガイドラインは、その時々の状況によって二転三転してしまう。
2012年には「市街地には使わない。北部の自然環境豊かな場所に使う」と正反対に変えて、清水谷特別緑地(1342万円)を買い上げた。
その翌年には、街なかの貴重な保存樹林が売却されるのを防ぐため、「特別緑地と市街地のまとまった緑」に使うと変えたが、実際は、保存樹林には使われなかった。
2017年には「良好な自然環境を形成している緑地」に使うとされて、特別緑地や自然環境評価調査で自然度が高いとされた場所と規定された 。つまり、市街地のまとまった緑に使うことはできなくなり、特別緑地の買い上げや用地内の道路建設に使われた。(赤羽根十三図周辺特別緑地 1560万円、1490万円、道路 3331万円。)
まったく行き当たりばったりとしか思えない使い道の変更だった。
さらに「森林環境譲与税基金」が新たに制定されたが、北部の森林や特別緑地などに使いみちが限定されるので、市街地のみどりには使いようがない。
「緑のまちづくり基金」と「森林環境譲与税基金」の使いみちを整理、検討する必要があるとして、市はガイドラインの策定を保留した。その間も、買い上げたのは特別緑地のみだった。(清水谷特別緑地、赤羽根十三図周辺特別緑地 1233万円、赤羽根十三図周辺特別緑地 1089万円)
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✴️繰り返すが、茅ヶ崎市では、2009年に松浪緑地を買い上げてからは、13年間ものあいだ、市街化区域の緑地の取得実績はゼロである。
街なかのみどりについては、菱沼海岸(1307㎡)は買い取りの申し出があったが買い取らなかったし、香川公民館南側の保存樹林(698㎡)ですら買い取らなかった。
中海岸の南部最大の保存樹林(4980㎡)を持つ邸宅も、何ら手を打てずに開発となった。
ここ数年は、特に緊急な緑地の買い上げの必要性が生じた時にも、何ら手を打てないまま、市民にとって大切な緑地が次々と失われていく状況が発生している。
議会も実情を理解できていないのでは?
そんな状況のなか、令和5年3月議会では、「緑のまちづくり基金条例の一部を改正する」議案が出てきた。
今回の改正では、「緑地の維持管理以外にも基金を充てることができる」とされ、具体的には「自然環境評価調査」を行うための予算に充てるという。
委員会では大きく意見が割れた。
「基金は緑地買い上げに使い、調査研究は一般財源を使うべき。 」とする意見(改正には反対)、
「自然環境評価調査」は市内の緑地を保全するためなので賛成、とする意見。
しかし、昨今の自然環境評価調査は、自然環境の保全につながっていない。第一、海岸側には評価調査をするに該当する緑地もない。つまり、自然環境評価調査それ自体が街なかのみどりには関係がないことで、それは担当課も「その通り」と認めている。
13年もの間、街なかの緑地取得の実績がゼロであるのに、街なかの録地を買い上げる目的をさらに薄める、逆行する改正なので、私(杉本)は反対した。
なぜ茅ヶ崎市は街なかのみどりが残せないのか?
✴️ 市に「やる気がない」ということに尽きるのではないかと思う。
やる気のなさは、「緑のまちづくり基金」への積み立て金がゼロに等しいことからも分かる。
各基金への一般財源からの積み立て金は、
・子ども未来応援基金 3.2億円(子育て支援課)
・公共施設等再編整備基金 10億円(資産経営課)
・学校施設整備基金 10億円(教育施設課)
・緑のまちづくり基金 16万円 (令和5年3月議会)
基金への市の積み立て金(一般財源から)はゼロに等しく、逆に一般財源から出すべき評価調査の予算を、基金を取り崩して持っていくことになる。
16万円の積み立て金で緑地は買えない
「緑のまちづくり基金」の残高は、3億8600万円となる。街なかの緑地を取得するためには、億単位の積み立てをしなければ実現しない。
この金額で、いったいどう緑地を取得していこうとしているのだろう?
担当課(景観みどり課)はこう答えている。「実施計画2025 の策定の段階で、こういう土地を購入したいと想定した箇所はあった。ただ、それは採択されなかった。また、残高が3億8600万円程度では、市街化区域の用地単価は非常に高くなっているので、たいした面積の購入には充てられない。」
実施計画と同じ土俵に乗せたら買い取れない
「緑地の取得」は、民地を対象とする場合が多く、土地が売却になるタイミングや、地権者さんの意向に左右されるなど、杓子定規に、実施計画に入れてスケジュールをたてる事業とは「時間軸」が大きく異なる。
空間的に、俯瞰的に、感覚的に把握する状況判断も必要で、本来は、実施計画と同じ土俵に載せるものでない。
市の一般財源から「緑のまちづくり基金」に積み立てを行い、取得すべき緑地、好条件な申し出があった場合などに迅速に対応できるようにしておくもの。
調査、研究といった定まったスケジュールで動くものとは性質が違う。
茅ヶ崎市の街なかにわずかに残っているみどりは、防災上も貴重なスペースで、市民にとっては潤いと豊かさを感じる場所でもある。
次の世代に引き継ぐ大切な街なかの自然環境を残していかなければならない。
(令和5年3月議会)